YAMAHA MT-09 セミオーダーシートの偶然

皆さまご用命いただきまして誠に有難う御座います。

こちら本日出荷しましたシートです。

しかし、ちょっと少な目でしたねぇ。

沢山の方をお待たせしています。

年内残すところ僅かですが、最後まで確り作業しなくてはいけませんね。

この中にMT-09用のお揃いかな? てシートが二つ並んでいました。

この角度からだと分かりませんが、右がローシートで左がハイシートです。

同じ日に同じ車種用この仕様。

同日発送だしご夫婦もしくはご友人? なんて思って聞いたら送り先は別とのこと。

既に現行ではなく旧モデル用となっているこのシート。
(現行MT-09用は、現時点では未ラインナップ)

以前に比べ注文はやはり減っています。

その中でこのタイミング。

凄い偶然だ。

まー、厳密にはハイ/ローと形状も違うしセミオーダーの仕様も違うんですけどね。

MTシリーズは、他車種のように芯材を巻かず折り返してパイピング(状)にしています。

パイプの側面はステッチを走らせています。

こちらは、パッセンジャーサイドにもう一枚切り返しを入れています。

そこにブルーのステッチが走る。

目立つ色なのでステッチが波打たないようにするのは大変なんですよ。

単純に見えて、切り返しが幾重の面とアールを通りますからね。

面構成だけでも大変ですが、ステッチの調子の乱れがあると目立っちゃう。

裏糸の引き具合が均一じゃないといけません。

いや、均一だとダメなのだ。

スポンジの内アールと外アールでレザーの張りが異なるので、ステッチの陰影が変わります。

内アールではステッチのアーチが余り気味になるし外アールで張ってしまう。

これ縫いの時点で全てを行うのではなく、張り上がりを想定し、張り込み前に裏糸の調整を取っているんです。

正に表からは見えない仕事。

服飾でこれは無いんじゃないかな。

決してオートメーションでは無いので一糸乱れずとはいきませんが、フワッと見たときに揃って見えるかどうか。

これ実際に一糸乱れずで作ってしまう(作れないんだけどね)と、おもちゃのような軽い質感になってしまうんですよ。

良く例に出すのだけど、タンクに始まり前後フェンダーやサイドカバーのライン。

手書きピンラインと治具用いた筆書き(人 or マシン)とマスキングペイントと丸々デカールライン貼り。

手書きと言ったって、素人のぐちゃぐちゃのラインじゃダメですよ。

熟練工の仕事。

ただの同じ線なのだけど全く質感が異なるんです。

大量生産品では無いし、スタスタ縫ってぱっぱと張り込むのではなく、そういう質感を大事にしたい。

今もバックオーダーが沢山で納期も掛かっているのでもっと沢山作れる体制を取りやがれ! とお叱りも受けます。

ここ一年、いや、一年半か。

納期により未だかつて無いほど物凄い量のキャンセルもいただいています。

キャンセル分だけで数人雇用が…

ただ、これ以上多く作るとなると、抜本的な製造ラインの見直しが必要になるんですよねぇ。

これは、人は言わずもがなですが、スペース(工場)や機械など多岐に渡ります。

なに言ってるのと言われますが、困ったことに私は大きな会社にするつもりが無いんです。

弊社は昭和51年設立、来年で創業47年です。

聞いたことあるかもしれませんが、企業存続率

1年後で60%、
3年後40%、
5年後15%、
10年後5%、
30年後2%、
50年後は0.7%だそうです。

私が入る前は中山夫婦二人の会社(店)でしたが、私が参画してから多少は会社らしくなり規模も大きくなりました。

今がチャンスと急いで会社の規模と言うか形を変えたくないんです。

受け継いだので今の仕事の仕方を長く続けたい。

一先ず目先の50年までは何とか。(;´・ω・)

変化には弱いですが、周りに流されずに来たと思います。

ネームプレート黒
ネームプレート黒/赤

 
で、09のシート。

自分で原型作ってレザーパターン決めておいてなんですが、MT-09用シートは非常に難しい。

張り込みもそうですが、スポンジの抜けもすごい悪かった。(;´・ω・)

パターン決まるまでかなりスポンジのロス出し難儀しました。
 

先代の中山に良く言われましたよ。

『複雑そうに見えて簡単な物を作れ。』て。

その中山は、簡単そうに見えて物凄い難しい(面倒くさい)物を作る名人だったんですけどね。

製造を担う側はそりゃー大変でしたよ。

このMT-09用ダブルシートも簡単そうで作ってみたらなかなか大変でした。(;´・ω・)

走ったら最高なんですけどね。

ベルトは同じステッチカラーを使用していますが、ベースレザーがトップに合わせたディンプルと、サイドに合わせたカーボン綾でした。

この二つのシートを装着したバイクとオーナーさんが何処かで出会うことはあるんでしょうか。

もしそうなら面白いなー、なんて。

ね。

ご依頼ありがとうございました。